かつての賑わいを取り戻した「横丁」。地元民から観光客まで、多くの人を惹きつける横丁とは何か?
(※本コラムは『横丁する人々(桑原才介著)』第1章より、一部を再編して紹介するものです)
横丁として名の知れた、新宿「ゴールデン街」や渋谷「のんべえ横丁」。有名店でも5坪ほどと、「三密」を絵に描いたような小規模店が並ぶ横丁は、いつもお客でいっぱいだ。狭い店内でも常連客は平然と肩を寄せ合いながら社交の時間を楽しんでいる。
こうした飲食店は、店主や常連客によって独自の価値観が生まれ、規範が形成されていく。去る者追わず・来る者拒まず、いったん仲間に入れば帰属意識が芽生え、常連が常連を呼ぶ磁力を持つ空間になっている。
古き良き昭和のイメージが残る横丁。だが、2020年頃からオフィス街やファッションビルのテナント、商業施設の跡地などに新しい形態の横丁が数多く生まれた。飲食プロデューサー達が手掛けた新たな横丁は、流行の最先端として新たなトレンドを作り出している。それまでディープな存在だった横丁が、誰もが気軽に楽しめる場所になった意義は大きい。
横丁は地方再生のリーダー的役割も果たしている。それまで地元の常連客中心だった横丁を、観光で訪れた人が利用しやすいように改善。ある地域は新たな観光の目玉として横丁を新設。今や多くの横丁が街のランドマークとなっている。また、地元を盛り上げる起業家育成の場として、横丁が重要な役割を果たしている点も興味深い。